キャッシュ・フロー計算書の集計の注意 弥生会計 サポート情報

ID:ida18352

キャッシュ・フロー計算書では、実際に受け取った(または支払った)資金の額を集計する必要があります。しかし、キャッシュ・フロー項目に初期設定されている勘定科目では、キャッシュ・フロー計算書が正確に計算できない場合があります。そのような場合は、必要に応じて調整金額欄に調整金額を入力して調整してください。

調整金額欄を使用するケースとしては、「受取利息の入金が翌期になるため未収収益として計上する」など、実際の資金の受け取り(または支払い)が発生していなくても、損益計算書では収益(または費用)として計上する場合が考えられます。

具体的な例で説明します。

  • 費用の前払・未払、収益の未収・前受の処理
  • 貸倒損失発生時における処理

また、その他にも次のような取引は、キャッシュ・フロー計算書に集計されません。必要に応じて調整金額を入力してください。

  • 固定資産の売却時に「未収入金」で処理した場合
  • 剰余金の処分を行った場合

費用の前払・未払、収益の未収・前受の処理 

決算時に受取利息の未収分や支払利息の前払分が発生した場合には、その未収分や前払分を計上することになります。

キャッシュ・フロー項目に初期設定されている勘定科目では、次のように正しく集計されない場合があります。

A)決算整理仕訳で、受取利息の未収分が発生した場合

未収収益 100 受取利息 100

A)の仕訳では、資金の出入りは発生していません。

しかし、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計以降に表示される「利息及び配当金の受取額」には、「受取利息」の計上額が加算されます。

「その他資産の増加(減少)額」で未収収益計上額と同額が集計され、「営業活動によるキャッシュ・フロー」金額を計算します。

そのため、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の総額では、適切な金額が集計されていますが、「営業活動によるキャッシュ・フロー」を構成する個々の内訳金額は適切に集計されないことがあります。よって、上記例の場合には、下図に示すように「その他資産の増加(減少)額」および「利息及び配当金の受取額」の調整金額欄を使用して内訳金額を調整します。

I 営業活動によるキャッシュ・フロー 集計金額 調整金額 金額
その他資産の増加(減少)額 100 +100 0
利息及び配当金の受取額 100 -100 0

また、受取利息の「前受収益」が発生した場合や支払利息の「前払分」が発生した場合も同様です。

この場合の対処方法には、次の3つの方法があります。

  • 非資金取引の金額をキャッシュ・フロー計算書の「調整金額」欄で調整する
  • 科目を追加登録して仕訳を入力し、キャッシュ・フロー項目設定で、追加した科目を設定する

    A)の仕訳例では、「未収利息」の勘定科目を追加登録し、キャッシュ・フロー項目設定の「利息及び配当金の受取額」に減算するように設定します。 
  • 補助科目を登録して仕訳を非資金取引と資金取引とに分ける

    A)の仕訳例では、「未収収益」の勘定科目に補助科目「未収利息」を追加登録し、キャッシュ・フロー項目設定の「利息及び配当金の受取額」に減算するように設定します。

    また、「支払利息」の仕訳も同様に、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の小計以降に表示される「利息の支払額」へは、「支払利息」の残高が集計されます。  

未払い金として計上した金額の調整

前記の「未収収益」の場合と同様に、「未払金」として計上した仕訳がある場合は正しく計上されません。
「未払金」として計上した金額を調整金額欄で調整してください。


貸倒損失発生時における処理 

貸付金の一部を回収できなかったなど、貸倒損失が発生した場合にもキャッシュ・フロー科目の初期設定では適切な集計がされていないことがあります。

D) 貸付金 200を貸し付けた

短期貸付金 200 現金 200

E) 上記の貸付金 200のうち、150までは回収できたが50は回収できなかった

現金 150 短期貸付金 200
貸倒損失(外) 50

E)の仕訳で使用している「貸倒損失(外)」は、キャッシュ・フロー科目設定では、間接法は「対象外」、直接法は「その他の営業支出」となっています。「貸倒損失(販)」の設定も同様です。

キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「投資活動によるキャッシュ・フロー」の調整金額欄で次のように調整します。

<間接法の場合>

I 営業活動によるキャッシュ・フロー 集計金額 調整金額 金額
税引前当期純利益(損失) 50 -50
貸倒損失(新規に設定する) 50 50
II 投資活動によるキャッシュ・フロー 集計金額 調整金額 金額
貸付による支出 200 -200
貸付金の回収による収入 200 -50 150

「貸倒損失」科目の集計先の設定

「貸付金の回収による収入」には、貸倒損失の分が考慮されていません。そのため、以下の手順で上記例にあるキャッシュ・フロー項目「貸倒損失」などの名称のキャッシュ・フロー項目を追加して調整する必要があります。

  • [キャッシュ・フロー項目設定]画面で、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に貸倒損失などの名称で新規にキャッシュ・フロー項目を追加します。
    キャッシュ・フロー項目の設定
  • [キャッシュ・フロー科目設定]画面で、「貸倒損失」科目の集計先に、追加したキャッシュ・フロー項目(貸倒損失)を以下のように設定します。
    キャッシュ・フロー科目設定
勘定科目 集計項目 集計方法 +/- 集計項目 集計方法 +/-
貸倒損失(外)
貸倒損失(販)
貸倒損失 増減額 貸付金の回収による収入 増減額

<直接法の場合>

I 営業活動によるキャッシュ・フロー 集計金額 調整金額 金額
その他の営業支出 50 50 0
II 投資活動によるキャッシュ・フロー 集計金額 調整金額 金額
貸付による支出 200 -200
貸付金の回収による収入 200 -50 150
直接法による場合も、「貸付金の回収による収入」には、貸倒損失の分が考慮されていません。そのため、上記のとおり、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に集計されている「その他の営業支出」を50加算して「営業活動によるキャッシュ・フロー」を0にし、「貸付金の回収による収入」を50減算して、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計が-50になるように調整します。

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