売掛金などの債権が回収できそうにない場合は、貸倒れの危険性の大きさにより仕訳の方法が異なります。
【取り扱い】●貸倒損失 貸倒れの事実が発生したときは、貸倒損失を計上します。
法人税法上、貸倒損失の計上が認められるのは次の3つのケースです。
・法律的に金銭債権が消滅する場合
・金銭債権の全額が回収不能である場合
・一定期間取引停止後弁済がない場合
区分 | 事実 | 取り扱い |
法律的に金銭債権が消滅する場合 | 次の理由により法律的に金銭債権が消滅する場合 ・更正計画認可の決定 ・再生計画認可の決定 ・特別精算に係る協定の認可の決定 ・債権者集会の協議決定 ・債務超過の状態が相当期間継続し、弁済を受けることができない場合で、債務免除を書面により通知 |
切捨額や免除額を貸倒損失に計上します |
金銭債権の全額が回収不能である場合 | 債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収不能の場合 | 全額を貸倒損失に計上できます ※一部のみを貸倒損失に計上することはできません |
一定期間取引停止後弁済がない場合 | ・売掛債権で、取引停止後、1年以上経過した場合 ・債権金額より取立費用のほうが多くかかる場合 |
備忘価額1円を残して、貸倒損失を計上することができます ※貸付金などの債権は対象となりません |
【仕訳】
売掛金11,000円が貸倒れた場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
貸倒損失 | 11,000円 | 売掛金 | 11,000円 | 売掛金の貸倒れ |
※貸倒損失の消費税の取り扱いにつきましては、以下のページをご参照ください。
売掛金が貸倒れたときの消費税の処理方法
●貸倒引当金
貸倒れの事実が発生していない金銭債権や売掛債権は、貸倒引当金の計上を検討します。
貸倒引当金の計上方法は、その債権の状況により「個別評価」と「一括評価」の2つの方法があります。
・個別評価
貸倒れになる可能性が大きい債権は、1つ1つの債権について貸倒引当金を設定します。
設定方法は次の3つです。
1.50%基準による場合の設定
2.取立て等の見込みがない場合の設定
3.弁済猶予等があった場合の設定
区分 | 事実 | 貸倒引当金に計上する金額 |
50%基準による場合 |
次の事由が生じている場合 ・更正手続開始の申立て ・再生手続開始の申立て ・破産手続開始の申立て ・特別精算開始の申立て ・手形交換所の取引停止処分 |
金銭債権のうち、取立見込額や担保でカバーされない部分の50% |
取立て等の見込みがない場合の設定 | 次の事由で取立て等の見込みがない場合 ・債権超過の状態が相当期間継続し、事業に好転の見込みがない ・災害等により多大な損害が生じたとき |
回収不能と見込まれる金額 |
弁済猶予等があった場合の設定 |
次の事由で弁済が猶予されている債権 ・更正計画認可の決定 ・再生計画認可の決定 ・特別清算に係る協定の認可 ・第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約のものなど |
・5年経過後(6年目以降)に弁済される金額 ・担保権の実行等により取立が見込まれる部分の金額 |
・一括評価
貸倒れになる可能性が小さい債権は、まとめて貸倒引当金を設定します。
・実績基準額
一括評価金銭債権の額×貸倒実績率
・法定基準額
(一括評価金銭債権の額-実質的に債権とみられないものの額)×法定繰入率
※中小法人等(期末における資本金額等が1億円以下)について適用されます。
実績基準額と法定基準額を比較して大きい金額が限度額になります。
※一括評価による計算方法は複雑です。
詳細は税理士もしくは、所轄の税務署にお問い合わせください。
※貸倒引当金の仕訳は、個別評価、一括評価どちらも同じ仕訳です。
【例】
当年度に初めて、計算した貸倒引当金の金額は、11,000円だった
【仕訳】
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
貸倒引当金繰入 |
11,000円 | 貸倒引当金 | 11,000円 | 貸倒引当金繰入 |
【例】
翌年度になり、計算した貸倒引当金の金額は22,000円だった。
【仕訳】
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
貸倒引当金 | 11,000円 | 貸倒引当金戻入 | 11,000円 | 貸倒引当金戻入 |
貸倒引当金繰入 | 22,000円 | 貸倒引当金 | 22,000円 | 貸倒引当金繰入 |
※一般的に、翌年度の仕訳は、いったん、前年度の貸倒引当金を全額戻入れ、その年度の貸倒引当金の金額を繰入れます。
この他に前年度とその年度の差額を繰入れる(戻入れる)方法もあります。