本来の昇給月(給与規定で設定した昇給月)にさかのぼって昇給を行う場合は、昇給による差額を[昇給差額遡及支払]で計算します。
以下の場合は昇給差額を正しく計算できません。
昇給による差額を手計算し、給与明細書の「非税昇給差額」「課税昇給差額」に直接手入力してください。
- 残業手当や休日出勤手当など、計算項目を手入力で変更した場合
再計算の際に使用する計算式と一致しないため、正確な昇給差額を求めることはできません。 - 固定金額項目を手入力で変更した場合
基本給(月給)や、職務手当、通勤手当など、毎月固定の金額について日割計算や手入力で金額を変更した場合、変更された割合を使用して再計算することはできません。そのため、正確な昇給差額を求めることはできません。 - 支給項目の属性が変更されている場合
変更後の属性を用いて再計算されるため、正確な昇給差額を求めることはできません。 - 期中導入で過去データの入力が不十分な場合
勤怠や支給項目などの入力が不十分な場合は、一部の支給項目について再計算されないため、正確な昇給差額を求めることはできません。
- [給与]メニューから[昇給差額遡及支払]をクリックします。
[昇給差額遡及支払]画面が表示されます。
項目 説明 計算 [昇給差額計算]画面を表示します。
昇給差額を計算する従業員の絞り込みや表示順序の変更を行います。転記 [昇給遡及支払額データ転記]画面を表示します。
[対象]にチェックが付いている従業員の集計金額を、給与明細書の「非税昇給差額」と「課税昇給差額」に転記します。昇給月度 給与規定で設定した「昇給月度」が表示されます。この月度を基準月として昇給差額を計算します。
所得税の計算や昇給月度などの設定(給与規定:[その他]タブ)対象 集計後、転記する従業員を選択します。
※初期値では、すべての従業員にチェックが付きます。従業員 従業員別に昇給差額を表示します。
※昇給差額を直接入力することはできません。昇(降)給差額 - [計算]をクリックします。 [昇給差額計算]画面が表示されます。
- 必要に応じて集計結果の表示順序と集計条件を変更します。
初期値では、すべての従業員が集計されます。
集計する従業員の条件を設定する場合
設定する項目にチェックを付けて、条件をドロップダウンリストから選択します。
複数の項目を条件として選択したい場合
キーボードの[Ctrl]キーを押しながら項目をクリックします。
- [OK]をクリックします。
本来の昇給月度から処理中の給与月度までの昇給差額や、給与明細書に転記する昇給差額合計が表示されます。
昇給差額の計算
例:本来の昇給月が4月度で、実際に昇給したのが5月度の場合
- 明細項目ごとに金額を計算
支給項目の属性 計算方法 変動項目 4月度の金額をそのまま使用 固定金額項目 変動後の金額(5月度の金額)を使用 単価×倍率 単価は変動後の金額(5月度の金額)を使用 単価×日数(時間、回数)×倍率 単価は変動後の金額(5月度の金額)を使用
勤怠は4月度の勤怠項目の値を使用 - 1で求めた明細項目ごとの金額を合算して4月度の支給合計を計算
- 2で求めた金額と実際の4月度の支給合計を比較して昇給差額を計算
- 明細項目ごとに金額を計算
- 昇給差額を転記しない従業員については、[対象]のチェックを外します。
- [転記]をクリックします。※ロックされている給与明細書には転記できません。給与明細書をロックしている場合は解除してから転記してください。
給与(賞与)明細書のロックとロック解除方法 - 転記の確認メッセージが表示されるので、[転記]をクリックします。 給与明細書の[非税昇給差額][課税昇給差額]へ昇給差額が転記されます。
計算例
4月度給与で昇給することになっていたが、昇給分の支給がずれ込んで6月度に支給することになった従業員の場合
・昇給額「基本給(月給)」⇒「280,000」→ 「300,000」円
・「普通残業手当」の計算式は[割増単価]×[普通残業時間]×1.25倍
・[割増単価]は「基本給(月給)」を[1か月の平均所定労働時間](160時間)で割った単価
・残業時間は、4月度に6時間、5月度に4時間
基本給(固定金額項目)の昇給差額
(昇給後の単価-昇給前の単価)×(処理月度-昇給月度)
基本給の昇給差額 → (300,000-280,000)×2か月分=40,000円…(ア)
普通残業手当([単価×時間×倍率]の計算式項目)の昇給差額
(昇給後の単価で計算した額)-(昇給前の単価で計算した額)割増単価 | |
昇給前:280,000÷160時間=1,750円 昇給後:300,000÷160時間=1,875円 | |
4月の普通残業手当 | |
昇給前:1,750円×6時間×1.25倍=13,125円 昇給後:1,875円×6時間×1.25倍=14,062.5円 (給与規定の端数処理が反映。例では切り上げで14,063円) | |
5月の普通残業手当 | |
昇給前:1,750円×4時間×1.25倍=8,750円 昇給後:1,875円×4時間×1.25倍=9,375円 |
(昇給後:14,063円+9,375円)-(昇給前:13,125円+8,750円)=1,563円…(イ)
(ア)+(イ)=40,000+1,563=41,563円(遡及支払額)